――あの日少年だった私と、いっしょに旅したポケモンたちへ
ポケモンとの出会い
私がはじめてポケモンを手にしたのは小学生のときだった。
たしか誕生日プレゼントとして、父親と二人で「ハローマック」へ行き、買ったのがポケットモンスターの赤バージョンだ。
当時はなんの予備知識もなく、パッケージのリザードンのかっこよさにつられて、その場で衝動的にほしくなった。当時ゲームソフトは、カギのついたガラスケージに入れられていたので、わざわざ店員さんにあけてもらった記憶がある。
まじまじと箱を見て、「モンスターを捕まえて、育てて、冒険する」というようなフレーズに心引かれた。
家に帰って、さっそくゲームボーイを起動。
おもしろかった。
はじめてみるモンスターを捕まえて、仲間にして、いっしょに冒険する。「この世界をつくった人は天才だ」と子どもながらに思った。
夜、ベッドで寝るまえに、世界中をポケモンと旅する妄想にあけくれた。ついには夢にまででてくる始末。
あまりにおもしろいので、ふだん自分で買ってもらったゲームを弟にやらせない私が、やらせてあげた。
「ポケモンっていってな、すごくおもしろいから。今度の誕生日きたら、緑を買ってもらいなさい」
ただ、ここで失敗したのが、ドラクエやクロノトリガーだとセーブが3つくらいできたのに、ポケモンは一個しかなかったこと。
「お兄ちゃん、セーブしていいの?」
「よかよ」
数時間後、カセットをかえしてもらった私は「僕のデータがない!」と、ボロ泣きで弟をせめた気がする。
理不尽な兄でごめん、弟よ。
でも、そのおかげで誕生日でもクリスマスでもないのに「緑」を買ってもらえたんだから結果オーライってことで許してくれ。
あと 151匹そろえるために、ゼニガメとフシギダネをもらってごめん! あと緑でしかでないポケモンも、もらってごめん! あのときは必死で151匹そろえたかったんだよ。ごめんな。
私とギャラドス
私とギャラドスについて語っていいかな。
ギャラドスっていうポケモンがいて、私はそいつが大好きだった。
いまビジュアルをみたら、なかなかにひょうきんな顔をしているんだけど、当時は「竜みたいだ、かっこいい!」「そして、そんな強そうなポケモンと旅してる僕かっこいい!」と本気で思っていた。
そもそもの出会いは、お月見山のポケモンセンターで、あやしいおじさんから500円でコイキングを買ったとき。
ギャラドスは、コイキングっていうもっとも弱いポケモンが進化した、なかなかに強いポケモンなんです。
でも当時はインターネットとかまだそんなに普及していなくて、コイキングがつよいポケモンに進化するってまわりはだれも知らなかったんですよ。
それでも一生懸命育てました。
「タダ弱いというネタポケモンにしては、手が込んでいる」子どもながらにピンと来たのか、ただ単に弱い自分を重ねていたのか、とにかくレベルをあげました。
ほかのポケモンはさいしょからもっている技の「たいあたり」を覚えたときのうれしさ。「これでレベル上げが楽になる」
レベル16まであげたのに進化しなかったときの絶望。(だいたい、他のポケモンはそのあたりで進化した)「もう、ボックスにあずけようかな……」
くじけそうになりながらも、あきらめのわるい私はレベルをあげつづけました。
そして、ついに「シオンタウン」と「ヤマブキシティ」のあいだの8番道路のくさむらで、レベル20になり、ギャラドスに進化したときは震えました。
「かみつく」を覚えたので、トレーナーと対戦したときにその技を繰り出したら、めちゃくちゃ強くて、「これはすごいポケモンかもしれない!」と弟や友達に自慢したのを、今でも覚えています。
「水」「ひこう」タイプなので、のちのち「でんき」タイプなどいろいろと苦戦するのですが、それでもいっしょに旅をつづけました。自力でレベル100にしたポケモンの一匹です。
当時の私が考えた最強のポケモンメンバー
私が手にした最初のポケモンは、ヒトカゲです。
初代のポケモンは「ほのお」タイプのポケモンは相性でめちゃくちゃ苦戦するのですが、やっぱり最終進化形のリザードンはかっこいいです。
旅をしていたときは、「リザード」「ピクシー」「パラセクト」をメインにして戦っていました。ついでに、さきほどの「コイキング」。そらをとぶ要員の「ポッポ」。あと、万が一、つよいポケモンが出たときのためにレベル高くで捕まえた「ダグトリオ」をひかえにそえていました。
なつかしいです。ピッピをお月見山でみつけて、ゲットして、さっそく月の石をつかってしまい技を覚えなくなったり。
そのため技マシンをつかって、ピクシーに「メガトンパンチ」と「バブルこうせん」を覚えさせたのでした。
パラスも最初はセミの幼虫みたいで、かっこいいからいっしょに旅したんだった。パラセクトになったときはびっくりしたけど。
最終的に、わたしがそろえた最強のポケモンメンバーは「ミュウツー」「リザードン」「ギャラドス」「ライチュウ」「サイドン」「ゲンガー」です。
自力でレベル100にしたのは、ミュウツーとリザードンとギャラドスとゲンガーだけ。
ライチュウは裏技でレベル100にしました。なぜか「ほのうのパンチ」を覚えてた。
サイドンは秘伝マシンで「かいりき」を覚えさせてしまって、泣いたね。
ゲンガーは「さいみんじゅつ」のねむり攻撃がなかなか相手にきかなくて、技をくりだしたときはいつもハラハラしたね。
「はかいこうせん」が最強の技だと信じていて、ミュウツーとギャラドスに覚えさせたのもなつかしい。
誰がなんと言おうと私の最強メンバーたちです。
青を買って、スターミーやケンタロス、サンダースを育てたけど、やっぱり初期のメンバーが私の最強ポケモンだよ。
むかしポケモンマスターだったアナタへ
あれから年をかさねて、いつだったか151匹あつめたポケットモンスター赤を私は売ってしまった。
あれだけ夢中になっていたものを、手放してしまうなんて、キミは信じられないかもしれないね。
今になって思うよ。大事にとっておいたらよかったって。
私は大人になって、仕事して、なかなかにいそがしい日々を送っているよ。
それでも数年前、つい発作的に、ポケットモンスターの黒を買ったんだ。おもしろかった。新しいポケモンといっしょに旅ができてうれしかった。
でも、そこには、むかしの「僕」と旅した最強メンバーはいなかった。
それからいくつかあたらしいポケモンの新作がでたけれど、私は手にしなかったよ。
今度「サン」「ムーン」というあたらしいゲームがでるらしいのだけど、「色じゃないのか……むかし遊んだロボットポンコッツみたい」という理由で、スルーするつもり。
(でも、ほのおタイプのねこポケモンがかわいいんだ。むかしから、ねこ好きなキミなら、買ってしまっても、しかたないと笑ってくれ)
でも、最近ニュースになっている「ポケモンGO」というゲームは、スルーできなかった。
ポケモンGOはスマホをつかって、リアルに外を歩き回って、ポケモンをゲットできるというものらしいんだ。
キミはスマホって何? っていうかもしれない。でも、「リアルに外を歩き回って、ポケモンをゲットできる」って、どこかのだれかが夜、ベッドで寝る前に、妄想していた話といっしょだと思わない?
子どものキミは、自転車で町中を走り回っていたね。
大人になった私は、飛行機とか新幹線とかをつかって、子どものころはいけなかった場所にいくことができるんだ。もちろん仕事でなんだけど、いろんな場所にいける。
もしかしたら、そこで会えるかもしれない。
むかしキミが最強だと信じてうたがわなかったポケモンたちと、また会えるかもしれない。
私は期待するよ。
少年だったころに夢見た、ポケモン達と旅して、世界中のポケモントレーナーと切磋琢磨しながら、ポケモンバトルに明け暮れる日々を。
だから言わせてくれ。
この記事を読んでいる、むかし、ポケモントレーナー……いや、ポケモンマスターだったアナタへ
どこかの旅先で会ったときは、
「ポケモンバトルしようぜ」