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ねこくまブログ

もはやただの雑記です。

「メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション」を読んだ感想

小説

メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション

どうも! 筆者ともです。

 

「メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション」という小説を読みました。

 

幻夢コレクションというだけあって、作者は「乙一」「中田永一」「山白朝子」「越前魔太郎」と豪華なラインナップ。またそれぞれの小説を「安達寬高」が解説するというおまけつきです。ちなみにこの5名は、すべて同一人物であり、さらにいえば「枕木憂士」という名義で映画エッセイを寄稿していたことが、本作の著者略歴で判明しました。

 

以下、7つの短編小説の感想(ネタバレを含む)を書いていきたいと思います。

 愛すべき猿の日記/乙一

あらすじ

高橋マモルがペンとインクで日記を書くことによって、わらしべ長者的に成長する話。未来の誰が読むかもわからない日記だが、それでも書かずにはいられない――。

 

解説

安達寬高の解説によると、本作は「乙一のシナリオ理論を意図的に排除した作品」だそうだ。乙一の小説といえば映画シナリオを参考に「物語を4分割し、その4分割したものをさらに4分割する」「物語の真ん中で転換する」などが特徴だった。編集者の依頼で書いてみたらしい。そのため「普段は削ぎ落とされる思想がこの短編には純粋な状態でのこっているのかもしれない」そうだ。

 

読んだ感想

014ページから怒濤のように物語がダイジェストで流れていく。あとになって気づいたが、このページから段落がない。高橋マモルが、インクの入っているビンの蓋をあけてから、月日が流れるのが早い。その刹那ともいえる瞬間に、何を残すか、何をつないでいくか、ふと考えてしまった。とても母性的な短編小説。

 (初出「papyrus (パピルス) 」2005年 08月号 創刊号

山羊座の友人/乙一

山羊座の友人 (ジャンプコミックス)

あらすじ

松田ユウヤはある夜、同級生の若槻ナオトが殺人を犯した現場に遭遇する。陰惨ないじめの標的になっていた若槻は、追い詰められ相手を殺してしまったのだっ た。今までいじめを見て見ぬふりをしてきた罪悪感から、ユウヤは彼と逃げる決意をするが!? 少年二人の逃避行の果てに待つ、衝撃の真実。そしてあまりに 切ない結末とは――

解説

風の通り道に建つ一軒家のベランダに、毎回、おかしなものがひっかかるシリーズのひとつ。 昨今のいじめ問題に関するさまざまな思いから執筆されたとのこと。

 

読んだ感想

以前、ジャンプ+で連載されていた漫画版を読んでいたため、物語の最後まで知っていた。それでも小説版では、「若槻をいじめていた人物も昔いじめられていたこと」が書かれていたり山羊の話が詳細だったりと、若干のちがいがあった。漫画版と原作は互いに補填し合っていると思う。

 

また、松田が「本庄ノゾミ」に追及したとき「自分はどうして彼女を追及しているのだろう。友達のはずなのに」と疑問に思った点について……あれは、やはり松田は本庄のことを友達以上に好きだったのかもしれない。

 

「本庄」と「佐々木」が行なった犯行はもちろん許されるはずはないし、追及しなければいけないところではあるが、彼女らが付き合っていると知り(後日誤りであることがわかる)、無意識に、必要以上に攻撃してしまったのかもしれない。

 

そんな「山羊座の友人」はなんとも言えない、切ない空気感が漂っていて私はその空気が好きだ。今でも思い出すたびに、胸が締め付けられる。

(初出「ファウストvol.8」2011年9月

 宗像くんと万年筆事件/中田永一

あらすじ

小学校の教室から万年筆がなくなった。犯人の濡れ衣を着せられた「私」を、宗像くんが「10円の恩義」で助けてくれた話。

 

解説

中田永一といえば「百瀬、こっちを向いて。」「くちびるに歌を」が映画化され、その作品の雰囲気が少年漫画のラブコメ漫画のようであることは、徐々にひろまってきているのではないだろうか。しかし、今作の「宗像くんと万年筆事件」はそれらを含みつつも、「乙一」成分がにじみでてしまったようだ。宗像くんの小学生ながら、ロジカルな推理は、もしかしたら他の短編シリーズとして読める日がくるかもしれない。

 

読んだ感想

おもしろかった。エラリークイーンのような論理的なミステリが好きなのと、ボーイミーツガールがよいかんじでからまって、作品にすてきな空気が流れていたように思う。また宗像くんのキャラクターが秀逸で、最後の「かけ」に足が震えているところは、逆にとてもかっこいいものでした。

 

(初出「小説すばる」2012年2月号

メアリー・スーを殺して/中田永一

あらすじ

さえない人生を送っていた私の生き甲斐は、創作物の世界にのめり込むことだった。部活で創作物を書いていると「メアリー・スー」が作品にあらわれるようになった。私はその概念を打ち破るため、さえない自分を変えていくことを決意する。

 

解説

「メアリー・スー」とは「作者の願望が不快なほどに投影されたオリジナルキャラクターのこと」である。さえない現実の私が、創作物の中で途上人物として活き活きとしている。 すべての創作をした人なら、一度は彼女に出会ったことがあるだろう。

 

読んだ感想

創作をする人は、もしかしたら現実の世界で何かが足りていないのかもしれない。その何かをうめるために物語をつくっているのかもしれない。ひょんなことから、現実世界でその何かが満たされてしまったら、きっとメアリー・スーはもうでてこないかもしれない。そんな状態で、はたして創作はできるのだろうか。考えさせられた。

創作をしている人に、ぜひおすすめしたい短編だった。

あと、斎藤ロビンソンはいいヤツだった。

 

(初出「ダ・ヴィンチ」2013年4月号

トランシーバー/山白朝子

あらすじ

おもちゃのトランシーバーで、死んだ子どもと会話する男の話。

 

解説

死んだものと会話するというホラーティストな作品。東北地方太平洋沖地震と福島第一原子力発電所事故の悲劇が執筆の動機になっている。

 

読んだ感想

愛する人を亡くしてしまった男のつらさが伝わってくる。死んだ子どもの「……こっちきてー!……いっしょにあそぼー!……」という声にむかって「しょうがないなあ。じゃあ、ちょっとまってろ」のくだりは背筋が震えた。

 

また、どうも私は「乙一作品」をミステリとして読むクセがあり、「エンエン」にはなにか裏があるのではないか、「死んだ妻」になにか秘密があったのではないか、最後に生まれてくる子供も死んだ子どものように言葉がおそいのではないか、など無粋な勘ぐりをしてしまった。

 

これから読む人がいるなら、純粋な気持ちで読んでほしいと思う。

 

(初出「冥」vol.4 2014年4月

ある印刷物の行方/山白朝子

あらすじ

私が研究所のアルバイトで、あるものを燃やしていた話。

 

解説

STAP細胞と3Dプリンターがにぎわていた2014年ごろに書かれた短編。

 

読んだ感想

私は小説の登場人物を、既存のキャラクター、有名人、職場の人間や友人などとイメージで結びつけるクセがある。今回「柳原」という人物には、なぜか弱虫ペダルの「御堂筋翔」が重なった。

 

作品作りの中では、前半で、赤ん坊を生むということに対して「私には縁のない話だ」と、さらりと描写して、後半でそのことが重要な動機につながっていく点はやはりうまいと思った。

 

物語の内容に関しては、なんとも言えない。いろいろと私の中で、うごめいているものがうまく言葉として出てこない。

 

最後にあきらかになる私が燃やしていたものの描写は、圧巻で、なおかつ悪寒が走った。

 

(初出「読楽」2014年8月号

エヴァ・マリー・クロス/越前魔太郎

あらすじ

三流出版社の雑誌記者である俺は、エヴァ・マリー・クロスと幸せに暮らすため、町の莫大な資産を持った有名な老人について、スクープをあげようと躍起になる。そこで耳にした「人体楽器」を実際に目のあたりにした俺は――。

 

解説

作者「越前魔太郎」は複数作家による仮面作家である。その1人が「乙一」というわけだ。

 

読んだ感想

最初、いつものくせでミステリではないかと疑って読んだ。タイトルが「エヴァ・マリー・クロス」というくらいなので、黒幕が実は彼女ではないかと疑っていた。終盤、「そっちか!」とひとりで納得した。

 

以前読んだ「ZOO」に、雰囲気がなんとなく似ているように思う。また文体は「アークノア」に近い。「幻夢コレクション」と銘打ったからには必要な書き下ろしだったと思う。

 

(書き下ろし)

まとめ

久しぶりに「乙一成分」を摂取した。私は定期的に、彼の書く小説を読まないといけない病にかかっているので、今作はかなりの量を摂取できたように思う。

 

最近は忙しくて本を読むヒマがないが、今作のように短編なら読みやすい。

次は山本周五郎賞にノミネートされた「私は存在が空気」を読む。

私は存在が空気

私は存在が空気

 

 

(それにしてもこの記事では途中から文体が変わっている。今後、気をつけたい。)

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