どうモー。牛野トモです。
あなたは小説を読みますか? 私はめっちゃ久しぶりに読みました。
しかも読後感がバツグンに爽やかなやつを。
今回読んだのは「雨の日も神様と相撲を」という、ちょっとかわったタイトルの文庫本。
物語の舞台は4月初めから5月初旬。
同じ季節の連休中に読んでもいいし、梅雨の時期や雨の日にももってこいの小説です。
※あらすじと物語の雰囲気をお伝えしたあとは、ネタバレ満載の記事になります。
あらすじ
中学3年生の「逢沢文季(あいざわふみき)」は、春休みに都会から田舎の「久々留木(くくるぎ)村」の学校に転校する。
文季は環境の変化により、長年続けていた相撲をやめようとするが、村では住民全体で相撲を取る文化があり、辞めどきを見失ってしまう。
そんな中、村を治める遠泉家のお嬢さん「遠泉真夏(とおいずみまなつ)」からある相談を持ちかけられる。
同時に、隣町で死体が発見されて、もつれ合った事件は思わぬ方向へ進んでいく。
本編の雰囲気
この小説を一言であらわすと「少年少女青春伝記」になります。
ですが、本編では「スポーツ(相撲)」したり「推理」したりと、それだけでは言い表せないくらい内容がどっさり詰まっていておもしろいです。
ファンタジー要素がでてくるかと思えば、意外と現実よりだったりして、不思議な感覚をあじわえます。
淡々としている主人公の文季と、いつも怒っているようなお嬢さんのやりとりも読んでいて楽しいです。
「青春っていいなあ」となります。
物語のラスト付近では、最高潮の波が「これでもか!」と押し寄せてくるので、ページから目が離せません。
2回目読み返すと、最初読んだときとはまた違った気持ちで読むことができるのもポイント高いです。
コミック 漫画版あり
上の小説が原作ですが、私はこの作品を最初に知ったのは、スマホ漫画アプリ「マガジンポケット」でした。
無料で連載中のコミック版を読めるので、小説を購入前に読んでみるのもおすすめです。
違いとして、小説は三人称で淡々と物語がすすみますが、漫画だと主人公の文季によりいっそう親近感がわきます。
小説だとさらっと流しているところも、詳しく描かれていますよ。
作品のネタバレを含む感想
私がまず最初に言いたいこと
それは「カエル、マジで喋ってたんだ」です。
なんの予備知識もなく漫画版を先に読んでいたので、カエルが相撲をとっている場面を見たときはかなりびっくりしました。
「えぇ! そっち方面に話が転がるのかー」と。
ただ、お嬢さんがカエル様の言葉を通訳しているときは「これお嬢様が適当にしゃべっているのでは」とずっと疑っていました。
お嬢さん、疑ってすみませんでした。
もうひとつ驚いたところ
それは「お嬢さんのお婆さんをカエル、マジで食ってたんだ」です。
60歳になったらカエル様の花嫁になることについて、私は60歳なったらどこか別の土地でのんびりくらしているとかってに思い込んでいました。
長い間、村のために尽くしていて外にもあまり出られないし、60歳になったら自由にどこでも行っていいよーみたいな。
この場面だけは、爽やかさとかなくてとても異色に感じました。
犯人について
トランクの中に死体が詰められていた事件。
犯人は被害者であるIT社長「乾理恵子」の「夫」でした。
『保険金目的の他殺に見せかけた自殺』だったので、夫にしっかりしたアリバイがあったんですね。
IT社長は冷えた部屋かどこかで、刃物を固定し背中かから刺さりにいき(痛そう)、死ぬ前に丸まってトランクに入る状態になった、と。
副社長の夫に保険金が行き、会社の従業員も助かる算段だったのですが……
それにしても責任感半端ないです。
しかも夫に愛人がいるのを知っててそれって……どういう心境で自殺したんだんだろう……
あとウチダアキヤ(内田明矢)、犯人とまったく関係なかったですね。かってにヤドクガエルを林に捨てたらダメでしょ。
まさかの結末・ストーリー展開について
相撲対決について
まず、まさか文季とお嬢さんが相撲で戦うことになるとは、まったく思いつきもしませんでした。
たしかに赤いイチゴヤドクガエルをほかのカエルがやっつける展開が、やけにあっさりしているとは思いましたが……
しかも米俵10俵(約600kg)も片手で持てるお嬢さんに、作戦通りの取り組みをさせ、肩をはずすという意表をついて投げ飛ばすとは!
勝利宣言した文季はすがすがしい顔をしていたでしょうが、私はお嬢さん側の気持ちになっていて「え……これ文季が勝ったら、村の秩序がやばくないか」とハラハラしながら読み続けていました。
文季が村を侵略した「魔王」に思えたのも一瞬で、王子様が呪われた姫を助けるようにお嬢さんのカエル様の呪いから救ったのがわかったので、ほっとしました。
カエル様の正体について
カエル様が神様的なファンタジーものではなく、現実的(?)な寄生虫のようなもので、カエルにとりつく神霊だったのも驚きでした。
お嬢さんについて
初登場シーンで、オートバイを担ぎ上げていたため、高校生かと勘違いしていました。
誰かが乗り捨てたバイクを、カエル様の命令で撤去していただけだったんですね。
そのシーンがイチゴヤドクガエルの神様の誕生に関わっていたり、文季に一目惚れして相談を持ちかけるきっかけとなる大事な場面だったとは。
外では仏頂面でも、家の中ではカエル様がうんざりするくらい文季の話をしていたのを想像するだけでもおもしろかったです。
まとめ
この物語は「遠くの外からやってきた偉人が、元からいる土地の悪神を慎め、新たな秩序をもたらす神話」になぞらえていました。
もし続編があるとしたら、「お嬢さんの母親の呪いをとく話」や、また「警察の叔父がらみで事件に巻き込まれるか」、「昔の相撲道場仲間が訪ねてくる」とかがありそうです。
小説から漫画化とメディアミックしているので、人気次第でいずれドラマ化や映画化するかもしれませんね。
個人的には、土曜日の夕方6時にNHKであったドラマ「六番目の小夜子」とかに近いイメージなので、そのあたりで放送してもらえたらうれしいです。